星が墜ちたあの日。
空が燃えたあの日。
敬愛する父は亡骸になって帰ってきた。あんなに泣きじゃくる家族を見るのはこれが初めてだった。「おとうさんの代わりに、これからは僕が家族を守りたい。」
その小さな願いは、旅立つ理由に十分だった。

父が第七霊災の時に亡くなって…
なので父の代わりに家族を守るために旅に出たんです。      ▼

その日はあいにくの大雪だった。
次に里に帰れるのはいつになるのだろうか。
「寂しくなるね。」
「帰ってきたらまたご本読んでくれる?」
胸をつつむ不安を悟られぬよう、
ぎこちない笑顔で友と語らう。
「いってらっしゃい。アニータお兄ちゃん。」別れを惜しむ手を強く引かれ、わたしは里を後にした。

俺の昔話?…面白いものでもないし何より時間の無駄だ。
それよりも君の話を聞かせて欲しいな。
聞き手の方が得意なんだ。                                ▼

ある昼下がり、
少女は修行を抜け出し一人で川沿いを歩いていた。
「さぼってるのがばれたらまた怒られるんだろうな。」
そんなことを考えながら手に取った石ころを川に放り投げる。
だって、修行は厳しすぎるし、何より退屈だもの。
探検とか買い食いとか、もっとわくわくすることがしたい。
「いつかこの家を抜け出して、自由に生きるんだ!」

ウチの家は色々と厳しくてねぇ…
面倒だったから逃げ出してきたってわけ。まぁでも安心して!
修行はサボってたけど腕は保証するから!                  ▼

崩れ落ちる邸宅の中を走り抜ける。
辺りは焼け焦げた木材と血肉のにおいで充満していたが、
僕の鼻にはもうすっかりなじんでしまっていた。
気配を感じ、ふと足を止める。
邸宅の最奥には一人の少女がたたずんでいた。
「敵は誰であろうと皆殺しにしろ」
そうだ。これは主の命令だ。
僕には最初から、ためらうことなど許されていないのだ。
柄を握り直し、振りかざした剣は
少女の首を

僕は……僕の道は正しいのだろうか……                    ▼

「お前ももう少し大きくなったら、
外の世界を冒険してみるといい。」
師匠がいつも言っていた言葉。
師匠は外の世界のことをなんでも知っていた。
だからきっと、ちょっぴり変わった私のことも
受け入れてくれたのだろう。
師匠の言った通り、外の世界は本当に美しかった。
一面を雪に覆われた山々も好きだったが、
やっぱり師匠が愛したこの世界が大好きだ。
「愛しているわ。マスター。」
墓石に花を供え、そうつぶやいた。

アタシのマスターはね、昔世界中を旅していたの。
その時のお話をアタシにたくさんしてくれて……
ふふっマスターの言うとおりとっても素敵ね外の世界って!  ▼

うだるような暑さの中、
すっかり青ざめた友人を抱えカルドは彷徨っていた。
どれだけ訴えても、道行く人々は聞く耳を持たない。
弱い人の声は強い人の声にかき消される。
今までだってずっとそうだった。
……奇跡なんて起こらなかった。
結局、この世界は富か力、
どちらかがなければどうにもならない。
そう悟った時にはもう、
腕の中の少年は少し軽くなっていた。

……あいつは、俺が初めて殺した相手だ。                  ▼